生涯学習体系
広島県看護協会は、看護職がさまざまな場で多職種間の連携・協働を基に質の高い看護を提供し、ケアの受け手がよりよく生きるための支援を行うことを保証するために、生涯学習体系を定め、充実した研修プログラムの企画、実施に努めるとともに、専門職業人としての看護職の主体的なキャリア形成を支援します。
教育理念
広島県看護協会は、人々の健康な生活に寄与するために、看護職の主体的な生涯学習を支援するとともに、所属する組織に対して看護職の資質向上に係る支援を行う。
教育目的
広島県看護協会は、看護職が専門職として期待される役割を発揮するために必要な能力を主体的に開発・維持・向上するとともに、自身がキャリア形成を行うことができるよう、生涯学習の機会を提供する。
- 多様化・複雑化するヘルスケアニーズに対応する看護職の役割発揮に向けた支援
- 主体的な学びに関わる看護職の質向上のための支援
- 組織的な看護サービスの質向上のための支援
研修計画の枠組み
主体的なキャリア形成を促す視点に立ち、研修計画は次の1~4を基本的な軸として構成する。
- 研修分類【表1】
- 「看護実践能力」【表2】
・専門的・倫理的・法的な実践能力
・臨床実践能力
・リーダーシップとマネジメント能力
・専門性の開発能力 - 「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー;CLoCMiP®)」【表3】
- 「病院看護管理者のマネジメントラダー」【表4】
【表1】 研修分類
分類 | 内容 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
分類1 | 専門職としての活動の基盤となる研修 | 習熟段階や活動の場、役割等を問わず、すべての看護職の活動の基盤となる研修 | ||||
分類2 | 看護・医療政策に関する研修 | 看護・医療政策に関する研修 | ||||
分類3 | 人材育成や教育支援を行う者を対象とした研修 | 看護職の主体的な学びを支援する者の育成・支援を目的とした研修 | ||||
分類4 | 看護管理者を対象とした研修 | 看護管理者としてより良く働くための環境整備に必要な労務管理に関する知識をはじめ、組織管理等に関する研修 | ||||
分類5 | 資格認定教育 | 認定看護管理者教育課程に関する研修 | ||||
分類6 | 看護職能団体としての研修等 | 看護職能団体としての諸課題を追究し、看護職能としての機能性を高めるための研修 |
【表2】 看護実践能力
能力 | 能力の構成要素 | 能力および構成要素の定義 |
---|---|---|
専門的・倫理的・法的な実践能力 | 自らの判断や行動に責任を持ち、倫理的・法的規範に基づき看護を実践する能力 | |
アカウンタビリティ (責務に基づく実践) |
看護師としての責務と職業倫理に基づき、自らの判断や行為、行ったことの結果に責任を負い、自身の役割や能力に応じた看護実践を行う | |
倫理的実践 | 看護師として倫理的に意思決定、行動し、人々の生命や権利、多様性、プライバシー等を尊重し看護実践を行う | |
法的実践 | 看護師として法令遵守が定められている行動は何かを認識し、法令やガイドライン、所属組織等の規範に基づき看護実践を行う | |
臨床実践能力 | 個別性に応じた適切な看護を実践し、状況に応じて判断し行動する能力 | |
ニーズをとらえる力 | 体系的な情報収集とアセスメント(整理・分析・解釈・統合)を行い、看護問題の優先順位を判断し、記録共有する | |
ケアする力 | ケアの受け手とのパートナーシップのもと、それぞれの状況に合わせた看護計画を立案・実施・評価し、実施した看護への対応を行う | |
意思決定を支える力 | ケアの受け手や関係者との信頼関係と対話、正確かつ一貫した情報提供のもと、ケアの受け手がその人らしく生きるための意思決定を支援する | |
協働する力 | ケアの受け手や保健・医療・福祉および生活に関わる職種・組織と相互理解し、知識・技術を活かし合いながら、情報共有や相談・提案等の連携を図り看護を実践する | |
リーダーシップとマネジメント能力 | 組織の一員として看護・医療の提供を効率的・効果的に行うために、 状況や役割に応じたリーダーシップを発揮しマネジメントを行う能力 |
|
業務の委譲/移譲と 管理監督 |
法的権限や役割等に応じて、看護チーム(看護師・准看護師・看護補助者)における業務委譲および多職種への業務移譲と、業務遂行の管理・監督を適切に行う | |
安全な環境の整備 | 安全な看護・医療提供環境の維持・実現のため、リスクの評価や適切なマネジメント方法の検討を行い、医療安全、感染予防、災害対応等を行う | |
組織の一員としての 役割発揮 |
組織(チーム等)の中で、業務改善やチームワーク向上のために行動し、担う業務の優先度を考え、時間等の適切な管理のもとに実施する | |
専門性の開発能力 | 看護師としての資質・能力を向上し、適切かつ質の高い看護実践を通じて、 看護の価値を人々や社会に提供し貢献する能力 |
|
看護の専門性の強化と 社会貢献 |
看護の専門職として、制度・政策の提言や看護学の発展等の看護の効率・効果を高める活動に、専門組織を通じて関わり社会に貢献する | |
看護実践の質の改善 | 看護の成果を可視化、分析することで、自身や組織の看護の改善プロセスに関わるとともに、同僚や学生の学習支援・指導に関わる | |
生涯学習 | 自身の能力の開発・維持・向上に責任を持ち、生涯にわたり自己研鑽を行い、他の看護師や保健・医療・福祉に関わる多様な人々と共に学び合う | |
自身のウェルビーイング の向上 |
適切で質の高い看護を実践するため、看護師自身のウェルビーイングを向上する |
看護実践能力の習熟段階
新人 | 必要に応じ助言を得て実践する |
---|---|
Ⅰ | 標準的な実践を自立して行う |
Ⅱ | 個別の状況に応じた判断と実践を行う |
Ⅲ | 幅広い視野で予測的に判断し実践を行い、ロールモデルとなる |
Ⅳ | より複雑な状況において創造的な実践を行い、組織や分野を超えて参画する |
【表3】助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー;CLoCMiP®)
新人 | 1.指示・手順・ガイドに従い、安全確実に助産ケアができる 2.指示・手順・ガイドに従い、ウィメンズヘルスケアができる |
---|---|
Ⅰ | 1.健康生活支援の援助のための知識・技術・態度を身につけ、安全確実に助産ケアができる 2.院内助産・助産師外来について、その業務内容を理解できる 3.ハイリスク事例についての病態と対処が理解できる 4.支援を受けながら、基礎的な知識・技術・態度を身につけ、ウィメンズヘルスケアができる |
Ⅱ | 1.助産過程を踏まえ個別的なケアができる 2.支援を受けながら、助産師外来においてケアができる 3.先輩助産師とともに、院内助産においてケアができる 4.ローリスク/ハイリスクの判別および初期介入ができる 5.特徴的な事例について、ウィメンズヘルスケアができる |
Ⅲ | 1.入院期間を通して、責任をもって妊産褥婦・新生児の助産ケアができる 2.助産師外来において、個別性を考慮し自律したケアができる 3.助産師外来において、指導的な役割ができる 4.院内助産において、自律してケアができる 5.ハイリスクへの移行を早期に発見し対処できる 6.ウィメンズヘルスケアを自律して実践できる |
Ⅳ | 1.創造的な助産ケアができる 2.助産師外来において、指導的な役割ができる 3.院内助産において、指導的な役割ができる 4.ローリスク/ハイリスク事例において、スタッフに対して教育的なかかわりができる 5.ウィメンズヘルスケアにおいて、スタッフに対して教育的な関わりができる |
助産師のコア・コンピテンシ―
倫理的感応力 | 対象を尊重し、そのニーズを鋭敏にとらえて倫理的に応答することであり、助産師活動における道徳的義務を実践に反映する能力 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
マタニティケア能力 | 分娩を核とする周産期、すなわち、マタニティサイクルにおいて、安全で有効な助産ケアを提供することであり、妊娠期、分娩期、産褥期、乳幼児期におけるケア提供者としての役割・責務を実践に反映する能力 | |||||
ウィメンズヘルスケア能力 | 女性の生涯を通じた支援者であるとともに、相互にパートナーシップを築くことであり、ウィメンズヘルスにおけるケア提供者としての役割・責務を実践に反映する能力 | |||||
専門的自律能力 | 専門職としてのパワーを組織化し、社会に発信することであり、助産管理および専門職としての自律を保つための役割・責務を実践に反映する能力 |
【表4】 病院看護管理者のマネジメントラダー
Ⅰ | 自部署の看護管理者とともに看護管理を実践できる |
---|---|
Ⅱ | 自部署の看護管理を実践できる |
Ⅲ | トップマネジメントを担う一員として看護管理を実践できる |
Ⅳ | 病院全体の管理・運営に参画するとともに地域まで視野を広げた看護管理を実践できる |
病院看護管理者のマネジメントラダーを構成する6つの能力と定義
組織管理能力 | 組織の方針を実現するために資源を活用し、看護組織をつくる力 |
質管理能力 | 患者の生命と生活、尊厳を尊重し、看護の質を組織として保証する力 |
人材育成能力 | 将来を見据えて看護人材を組織的に育成、支援する力 |
危機管理能力 | 予測されるリスクを回避し、安全を確保するとともに、危機的状況に陥った際に影響を最小限に抑える力 |
政策立案能力 | 看護の質向上のために制度・政策を活用及び立案する力 |
創造する能力 | 幅広い視野から組織の方向性を見出し、これまでにない新たなものを創り出そうと挑戦する力 |
研修計画作成の方針
- 研修の体系化を図り、看護職の生涯学習を支援する。
- 研修計画の枠組みを基に研修を企画する。
- 成人学習理論を踏まえた研修を企画する。
- 看護を取り巻く時代的課題に対応できるよう柔軟に研修を企画する。
- 日本看護協会・関係機関および本会支部と連携し、本会の継続教育の充実を図る。
年度別研修計画作成の方針
- 研修計画の枠組み
- 研修内容
- 研修方法
- 講師
- 開催地